notes from the doctor

院長Note

春の学校健診を終えて

●今年の学校健診を終えての所感を書きます。今年は、高校、中学校、小学校の健診を行いました。長束保育園の園医をしていることから、秋には、園児の健診を行います。また、定期的に1歳半健診や3歳児健診を当番で行います。つまり、さくら矯正歯科クリニックに来院する子供たちだけでなく、すべての年代の多くの子供たちを診る機会を得ています。

●かねてからマスクの悪影響を心配していました。結論から言うと、想定より影響は小さいかもしれませんが、悪影響はあると思います。

●とくに、1歳半や3歳半の子供たちには、明らかな変化が見られます。過蓋咬合と言って、上下の前歯の重なりが大きすぎる子供が増えています。おそらく、舌の力が低下しています。

●子供は、大人の「まね」をしながら学習します。そのお手本がマスクをしていては、口の動きを観察することができず、舌の使い方を上手に習得できていない可能性が考えられます。口腔機能の低下だけでなく、世界中で他人への関心の低下により、子供のコミュニケーション能力の低下だけでなく、人間としてのさまざまな分野での機能低下が懸念されています。

●しかし、一方で、中高生はマスクの影響を、小さい子ほど強く受けてないように思いました。子供の回復力はすさまじく、この1-2年でマスクを外したことにより、キャッチアップできたのかもしれません。

●でも、気になることが2点ありました。

●一つ目は、若年での歯石沈着です。未だに、マスクを付けっぱなしの子供は、人に口腔内を見せることがないから、口腔清掃がおろそかになっている可能性と、マスク着用により血中酸素濃度が低下することから、口呼吸が増えたことにより、口腔乾燥による歯石沈着の可能性が考えられます。

●二つ目は、一番奥の歯が噛んでいない中高生が多いことです。これは、マスクはあまり関係していないかもしれません。実は、医原性かもしれません。小学生のころ、歯列矯正を行った結果、前から6番まで、きれいに並んだ人に多くみられます。早期の歯列矯正後のフォローがなく、14歳ごろに一番奥の7番がずれて生えてくるケースが非常に多く、本人も親御さんも、そのことに気づいてないことが少なくありません。さらに、その歯列矯正を行った先生も、それを知らないかもしれません。

●少し難しいですが、説明してみます。機能装置と言われるマウスピースのような装置だけでは、簡単に顎顔面の骨格を大きくすることはできません。小さい頃に前歯にでこぼこがある子供は、歯の大きさに対して、顎の大きさが足りていないので、顎顔面の骨格を大きくしないで前歯をきれいに並べれば、当然、奥歯にしわ寄せがいき、最終的に最も重要な大臼歯のかみ合わせが悪くなるということです。

●でも、その最後の大臼歯が14歳ごろに生えてくるので、その大問題に、本人や親御さん、先生までも、気づかないことが、あり得ます。さらに、その後に親知らずが生えてきて、問題を起こすこともあります。早期治療を行った場合、必ず7番や8番が生えてくる18歳くらいまでフォローしてもらいましょう。

●マスクはウイルスにほとんど効果がなく、長期使用でむしろ免疫低下をもたらし、感染しやすくなると言われています。もはや、科学的根拠はなく、日本独自の「エチケット?」でしかありません。

●他人に影響ないのであれば、付ける付けないは自由でよいですが、子供たちの目に触れる場面では、思いやりの精神で、外していただきたいと思います。

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