英国の矯正歯科
・広島大学矯正歯科OBによる「英国の矯正歯科」という講演会を聞きました。海外の矯正歯科がどんな風なのかとても興味があったので有意義な時間になりました。
●英国では、日本人が珍しい。以前は差別の対象となることもあったようだが、今では、誠実で勤勉な国民だと信用されている。
・イギリスの矯正は、保険とプライベート(自費)とがある。
●矯正の診断は、矯正専門医しか行えない。これは、主要国では当たり前のこと。なぜか、日本では、矯正歯科専門の国家資格がないので、歯科医師免許をもっていれば、誰でも矯正治療を行ってもよいことになっている。歯科大学では、矯正歯科について、基本のきしか習わない。諸外国では、歯科医師免許を取得した後、厳しく長期間の研修が課せられ、はじめて矯正専門医の資格がとれるのが一般的。
●イギリスでは、子供の早期治療はほとんどしてない。
・出っ歯の治療は10歳以降しかできない。出っ歯の原因は、下顎の劣成長が原因であり、その下顎の成長期が10歳以降だからと思われる。それ以前の早期治療は結果が得られにくい。
●保険にインビザラインなどのアライナー治療はない。
・ほとんどがマルチブラケット治療。プライベートの矯正治療では、使用されることもある。
●一定条件を満たすと保険で矯正治療を受けることができ、未成年はほぼ無料。
・欧州ではイタリア以外ほぼ同様と思う。以下は保険矯正について。
・日本は治療も説明もとても丁寧。英国は10分診療で3回目には装置がつく。患者に選択権はなく、歯科医師の診断の通りに治療が進められる。
・人気があり、2-3年待ち。ブレグジットの影響もあり、外国人の歯科医師がかなり撤退し、歯科医師不足。
・審美的な装置は選べない。ドクターも選べない。
・土日休み、平日朝8時から17時まで。休憩時間も短い。学校を休んで来る。
・3回キャンセルで治療不可になるので、キャンセルしない。遅刻もしない。
・日本は、受付、助手、歯科衛生士、歯科医師と4種くらいの職種だが、イギリスは、受付、助手、カルテ入力専門ナース、アシスタント専門ナース、デンタルセラピスト(歯科衛生士と医師の中間でほとんどの処置を行う)、歯科医師、矯正専門医、と7種くらいの職種で分業している。歯科衛生士は一般歯科で働き、矯正歯科にはいない。
●矯正治療の診断は矯正専門医が行うが、治療のチェックは一般の歯科医師も行え、ほとんどの処置は、デンタルセラピストが行う。カルテは専門スタッフが入力する。というように分業がしっかりされている。でも、日本の医療の方が丁寧だそう。
●日本の保険診療の報酬は、毎年政府が決めるが、積み上げ方式だから、より多くの検査や処置を行わないと、治療費が低くなり赤字になる。ご存じのように、7割近い病院は赤字経営。だから、医療従事者としては、食べていくために過剰診療になりがち。イギリスの診療報酬は、もっとシンプル。たとえば、CR充填なら、何カ所やっても、なにか追加してあげても、同一報酬。これなら、たくさんの患者をみないと収入が増えないので、過剰診療になりにくい。スウェーデンも同様。
・当院は、自費治療が主な収入源となっているので、比較的過剰診療は少ないと思う。