notes from the doctor

院長Note

小児矯正について

小児矯正は、矯正歯科の中でも、関心が高い分野です。様々なメディアで詳しく紹介されているので、ここでは私なりの意見を簡単に述べます。

過度な早期介入について警鐘を鳴らしたいと思います。不要な早期介入は、治療結果を良くするどころか、悪くする可能性のほうが高いですし、治療期間や治療費の面からもいいことはないです。では、なぜ、一部の先生が過度な早期介入をしてしまうのかと言うと、おそらくビジネスだからです。もちろん悪意をもって、お金を稼ぐために勧めているわけではありません。お互いにWin、Winになると信じて、まじめに良心的に勧めているのだと思います。

しかし、医療行為は、エビデンス経験に基づいて行うべきです。下に書いたように、日本人に多い出っ歯タイプの場合、12歳を過ぎてから介入したほうが結果が良いという膨大な研究データがでています。このエビデンスを、日本矯正歯科学会に入会していない先生は知らないのだと思います。歯科医師である以上、知らないは罪になってしまいます。ですから、疑問に思うことがあれば、先生に聞いてみるのもいいでしょう。日本矯正歯科学会のガイドラインに沿って治療してほしいと伝えてもいいと思います。日本人の歯列矯正を行うのに、日本矯正歯科学会に入会していないのは、おかしいと思います。

 

●小児矯正のメリット
・顎の成長をコントロール
・二期治療の負担を軽減
・口腔機能の改善
・子どもに自信を与える

●小児矯正のデメリット
・治療が長期になる
・むしろ逆効果になることも
・再治療の可能性が高い
・協力が不可欠
・一期・二期治療を合わせると、二期治療だけより高額

●国際的な視点
・反対咬合(受け口)においては、早期(11歳まで)の治療が有効
・すべての人が有効であるわけではない
・個別に成長パターンを見極めながら適切な時期を判断することが大切
・矯正専門医による早めのチェックを推奨も、治療開始が早いほどよいわけではない

●小児歯科・矯正専門医の意見の違い
・小児歯科では積極的に推奨する場合が多い一方、矯正専門医は過度な早期介入に否定的な場合が多い。
・日本小児歯科学会は、日本矯正歯科学会のガイドラインを支持し、過度な早期介入を警戒

●個人的な意見
・矯正治療に携わって23年の私は、小児矯正に積極的な広島大学矯正科の影響を受け、私自身も小児矯正に積極的な矯正専門医だと思っています。
・日本人に多い上顎前突(出っ歯)や過蓋咬合の場合、個別の判断になりますが、一般的に早期介入は良い結果につながりません。私自身が精密検査によって、早期介入したほうがよいと判断し、小児矯正を行ったケースの中にも、顕著な効果が得られなかったことが少なくありません。また、大変申し訳なく思いますが、結果的に全く有効でなかったケースも存在します。その経験から、過度な早期介入の必要はないが、子どもがコンプレックスを感じている場合は、上記の可能性を説明した上での早期介入は選択肢のひとつになると思っています。
・反対咬合や重度の顔面骨格不正については、早期治療が有効だと感じています。
矯正専門医による早期チェックが必要なのは明かです。一般歯科医が行う健診は十分と思いません。学校健診が不十分であることは言うまでもありません。
・全国で歯列矯正患者は10年前より2倍以上に増えました。しかし、日本矯正歯科学会の認定医は増えておらず、この資格の存在すら知らない人がほとんどです。積極的に探してでも矯正専門医のチェックを受けてほしいと思います。(当院だけでは限界があるので、申し訳なく思います。)

●広島市は、日本矯正歯科学会の認定医以上の先生が最も多い地域です。積極的に探して、矯正専門医のチェックを早めに受けることをおすすめします。

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