notes from the doctor

院長Note

大阪大学 矯正歯科/小児歯科の最新トピック

9月13日、母校である大阪大学歯学部の「第600回臨床談話会」が開催され、ウェブで受講しました。

講師:仲野和彦先生(大阪大学大学院歯学研究科 研究科長/小児歯科学講座 教授)
山城 隆先生(大阪大学歯学部附属病院 病院長/顎顔面口腔矯正学講座 教授)

たまたまですが、現在、歯学部長は小児歯科の教授で、病院長は矯正歯科の教授ということで、この記念回に、お二人の貴重な講演を聞くことができました。

小児歯科の仲野先生は、「低ホスファターゼ症」、「感染性心内膜炎」、「口腔機能発達不全症」について、矯正歯科の山城先生は、「矯正⻭科治療、限界を突破した技術」、「医療を取り巻く環境の変化」についての講演でした。

近い分野の教授同士が講演するということもあり、二人ともそれを意識していました。大阪大学の小児歯科では、埋伏歯(埋まっている歯)の牽引など、咬合誘導(子どもの成長力を利用して顎や骨格の正常な発育を促す治療)を開始する前に、たとえ最初は親が歯並びの治療は考えてないと言ったとしても、必ず矯正歯科と相談するとのことでした。というのも、永久歯が生えそろってくると、その時点でやっぱり歯並びも整えてほしいと希望されることが多いからだそうです。

基本的に、小児歯科の場合は、自らの成長力を利用して、顎の発育を促したりして歯の萌出を導く治療です。それだけでは、限界があるので、すべての歯が萌出したとしても、機能する歯列にならないことも多いのです。そこで、歯や顎に力をかけて、歯列を整えるのが矯正歯科の役割となります。

小児歯科や一般歯科でよく使用される、取り外し可能な「プレオルソ」「T4K」といった機能的矯正装置は、一定の効果があります。骨格に不正がない場合は、効果を認めることもあるのですが、それでもその効果は一過性のもので、成長期を迎えたときに後戻りを起こし、結果的に治療の効果が無くなったり、あるいは場合によっては治療介入が悪い影響を及ぼしてしまうこともあります。少なくとも骨格不正の明らかな改善はありません。世界的に有名な「プロフィトの現代矯正学」という教科書にも、「早期治療は効果はなく、効率もやや悪い」と明記されています。また、口腔機能へのアプローチ、すなわちMFT(口腔筋機能療法)は、協力が得られればとても効果がありますが、専門性が高く非常に難しい治療です。それについては、上顎前突の早期治療の是非(https://sakura-dental-c.com/notes/667/)で詳しく述べました。例外はあるものの、ざっくり言うと、機能的矯正装置は悪化は防げるものの、それだけでは根本的な解決には至らず、将来抜歯も必要な治療を行わざるを得なくなる可能性も高い。そうであれば、早期治療の効果はなく、むしろ治療期間や治療費を増大させてしまうだけということになります。しかし、成長期以降に精密検査をしなければ、その悪影響に気づくことがないかもしれません。小児歯科の先生が18歳頃のセファロ写真を分析するところをみたことがありません。当然、患者さんやその親御さんは、専門的知識がないので、それに気づくことはほぼありません。

ですから、小児歯科や一般歯科で治療を受けるにしても、早いうちに矯正歯科で相談しておいた方が、無駄が少なくなったり、短期間で結果的に低予算で良い治療結果を得られると思います。骨格性の不正があるのに、歯性の改善しか改善できない装置を使っても、きちんと治りません。不安があれば、当院のLINEで相談していただいてもいいと思います。すぐに返事できないかもしれませんが、必ず質問には真摯に回答します。今のところ、LINEでの相談は無料でさせてもらっています。

 

さて、矯正治療の限界を突破した技術とは、いったい何でしょう。「アライナー(マウスピース)」と思ったあなたは間違いです。後ほど説明します。じつは、「矯正用インプラントスクリュー(アンカースクリュー)」です。これは、矯正歯科医なら誰も否定しないでしょう。近年における大きな功績です。当院では半分くらいの患者さまにこのスクリューを使用しています。このスクリューが歯列矯正に用いられることになり、異次元の歯の移動が可能になりました。それによって、協力度が低い患者さんでも、理想に近いところまで治療できるようになったし、外科手術をしないと治療できなかった人でもある程度治療することができるようになりました。

それから、「仮骨延長法」です。当院では、急速拡大装置という装置を使って、骨を延長させることがあります。特殊な場面ではとても有効です。

矯正歯科の近年のトピックスというと、3Dスキャナーなどの「DX化(デジタル技術)」とインビザラインなどの「アライナー(マウスピース型)矯正」です。矯正歯科には、AI診断がかなり浸透してきています。山城先生は、少し懸念しているようにみえました。というのが、きちんと知識と経験をもった先生が、AIによるサポートを受けると、仕事の効率が上がります。ただし、AIは工程を代替してくれるだけで、選択や責任は代替してくれません。さらに、知識や経験が不十分な若い先生にとって、新たな知識をつけるモチベーションを奪ってしまい、若い先生たちの成長を阻害しているという研究データが出始めているとのことでした。

そして、「アライナー(マウスピース型)矯正」についてです。まず、アライナー治療にはとても高度な知識が必要とのことでした。そして、歯が計画通りに動いているか見極める力も大切です。もちろん、従来の(エッジワイズ)ワイヤー矯正のメカニクスの知識が必要です。アライナー矯正では、思ったほど歯が動かないということと、苦手な動きがあることがエビデンスとして明らかになっています。たとえば、下顎第一大臼歯の近心回転は、治療計画の3割ほどしか動かないとのことです。また、予期せぬ顎位の変化も起きやすいとのことでした。

つまり、術者が装置の限界を理解し、それを考慮して症例を選別しなければ成功しないということです。山城先生は、9割以上成功しないと医療と言えないのではないかと言っていました。しかし、アライナー治療は、診断の難しさに加えて、患者さんの協力も必要とするので、成功率は7割以下と言われています。厳密に調査すると、もっと低いかもしれません。

患者さんがアライナー矯正を行う際の注意点としては、ワイヤー矯正によるレスキューが可能な先生に診てもらうこと。治療が中断した際の対処法を確立しておくこと、だそうです。日本矯正歯科学会のガイドラインでは、抜歯症例は適さないとのことです。

他にも、もっと貴重なお話もしていただきました。教授になる人は、本当に頭がいいし、話が上手です。半日で、小児歯科と矯正歯科のトピックスをしっかりまとめることができました。

 

 

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